【完】狼様の最愛。
「俺の名前、薫って書いて本当はクンって読むんだけど。人間のときは薫(かおる)って呼んで! クンなんて名前、人間では少ないだろ?」
俺達は人と人の、ただの親友にように過ごしていった。
俺が後悔をしたのは、それから約三年後。
当時、俺が二十一歳のとき。
クンは、死んだ。
前々から、クンに弟がいることは聞いて知っていた。
俺のように動物の言葉がわかる小学生の女の子が、隣村にいることも知っていた。
俺が住んでるのは、今も昔も丘川。
いつもクンが、赤坂村から丘川まで来てくれていた。
そしてある日。
いつもの待ち合わせ場所に来たのは人の姿をしたクンじゃなく、かつてクンと同じ熊の姿をした、クンの弟だった。