口の悪い、彼は。
きっと私も千尋に優しくしてもらってるんだろうし、大切にもしてもらってるんだろうけど……それは目に見えるものだとは言えない。
でもそれが千尋の表現なんだと思っているし、そんな千尋が好きだから不満なんてこれっぽっちもなかった。
でも……もし、千尋が本当に好きな人に対しては目に見えて優しくしたり大切にするタイプだとしたら……?
私は千尋にとって、どんな存在だということになるの?
「まぁ、そんなふたりも別れちゃったけどね」
「……」
「何が原因かは教えてもらえなかったけど、嫌いで別れたわけでもなさそうだし、機会があればよりを戻しちゃうんじゃないかな~なんて未だに思ってるの。ふたりともまだ独身だし……この前、運命的な再会もしちゃったからね~」
「……え?」
ふふふ、と美都さんは楽しげに笑う。
どういうこと?
千尋と元カノが再会した……?
頭をがんと殴られた感覚に襲われ、呆然と美都さんのことを見ていると、美都さんはくすりと笑って口を開いた。
「再会したのはね、知夏ちゃんたちの結婚式の時なのよ」
「!」
「比奈子なの。千尋の元カノって」
「!!」
「ね、驚くでしょ?この前の結婚式の時、化粧室から戻ってくる時にふたりが話してるところを見たのよね。私が見た後すぐ離れちゃったからもしかしたら挨拶程度だったのかもしれないけど、ふたりの雰囲気、あの頃と変わってないように感じたから」
……比奈子さんが千尋の相手?
あんな綺麗で素敵な人が元カノだったなんて……。
喜多村さんたちが「部長の女を見た!」と話していた時とは違って、相手が明確で、しかも付き合っていたということは事実。
安心感に包まれていたはずの私は、一気にどん底に落とされてしまった。