口の悪い、彼は。
 

「……俺が誰を好きなのか、知りたいって?」

「あ、あの……っ」


それに……一番の問題は部長だ。

部長の様子は明らかにいつもとは違いすぎる。

急に何なの?

何でそんな表情で見るの?

それに、部長自らこんな流れに話を持っていくなんて信じられない……。

恋愛話なんて、いつもなら絶対に一蹴するか完全にスルーしそうな話なのに……。

疑問はたくさん浮かんでくるけど、部長の言う通り、部長のことが知りたいという気持ちが私の中にあることは間違いなかった。

部長は好きな人に対しては笑い掛けるの?

部長は好きな人に対しては優しく触れるの?って。

……私はそれを知りたいんだ。

そんな気持ちはおこがましくて、あり得ないことで、図々しいことだとは頭ではわかってる。

でも……部長のことなら何でも知りたい。


「どうなんだよ」

「……っ」

「答えろ」


必死に自分の気持ちを抑えているというのに、そんなことを知りようもない部長は、私を追い込む。

そんな風に見られたら、私は答えること以外の選択肢なんて簡単に消えてなくなってしまうのに。

それに……この真っ直ぐな瞳には嘘や誤魔化しはきかないって頭ではわかっている。

 
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