それが愛ならかまわない

 文面に目を通して驚く。
 あれから何の音沙汰もないから、北見先輩との遭遇は偶然のいたずらで少し嫌な思いをしただけだと自分の中で片付けようとしていた。
 別れた当時電話番号もメールアドレスもブラックリストに入れて着信拒否にしたけれど、新しい番号やアドレスを使えば届いてしまう。それでも先日の遭遇後も不審な着信はなかったから安心していた。


「篠塚どうした?眉間にシワ寄ってんぞー」


 井出島部長の声に我に返り、ディスプレイの文字列を睨みつけるように顰め面をしていた事に気づく。


「いえ、ちょっと鬱陶しい迷惑メールが」


 慌ててスマホを鞄に放り込みながら笑顔を取り繕う。いつもながら張り付いた様な業務用スマイルだと自分でも思うけれど、セクハラされようが不快なメールが届こうが既にこれが条件反射になっている。


「篠塚でもそんな顔する事あるんだな。お前常にニコニコしながら無理難題押し付けてくるイメージなんだけど」


「最近の篠塚は疲れてるのかたまに怖い顔してますよ。美人の顰め面は二倍怖いですね」

< 118 / 290 >

この作品をシェア

pagetop