それが愛ならかまわない

 福島さんに肩を支えられて、結局もう一度横になった。きっと次に起き上がるのは相当の気力と覚悟が必要になる。
 浅い呼吸を繰り返しながら目を閉じて目眩と吐き気が去るのを待った後、動作が性急にならないようにゆっくりと左腕を持ち上げて手首に嵌っている腕時計を見る。
 午後三時過ぎ。その針と文字盤の示す時刻が頭痛以上の衝撃で頭を殴りつけて来る。記憶があるのは昼休みの食堂まで。


「NTエステートのアポ……」


「ああ……大友君と井出島部長が代わって応対してくれてる」


 福島さんが肩をすくめながら言った言葉に文字通り目の前が暗くなる様な気がした。もしかすると話はまだ続いているかもしれない。けれど今から自分が行った所でどうしようもないし、そもそもこのコンディションでベストな商談が出来る自信もない。無事契約が取れたとしても、もうその担当が自分になる事はないだろう。重い頭でもそれくらいの事は分かる。


 蛍光灯の明かりが眼に痛くて両腕を目の前にかざして顔を隠した。
 室内に他に人の気配はない。産業医が来る曜日じゃないから基本医務室は閉まっているはずだ。誰かがわざわざ総務から鍵を借りて開けてくれたらしい。


 子供じゃあるまいし、体調管理が出来ていないのは完全に自己責任だ。でも情けないし、悔しかった。

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