それが愛ならかまわない
堰を切った言葉が次々と口から溢れ出してくる。
暴言と言っていいその文句の数々にちょっと酷いかなとは思ったけれど、蓄積されてきた不満はもう止められなかった。
「……」
目の前の相手はと言えば、呆気にとられたような顔で暴言を吐く私を見つめている。
今までこんな風にブチ切れた事なんかないから当たり前だ。彼は多分、私を例のイメージ通りに見ていたはず。だって出会ったのが、私が全力で愛想を振りまいていた企業向けセミナーだ。
でももう別れる人に取り繕う必要なんかない。今の彼の会社はうちの会社と取引はないから、仕事中に偶然会って気不味い思いをする事もない。
「もう一回言うけど、結婚なんてしない。よりも戻すつもりない。もう電話して来ないで」
ポケットから取り出した合鍵を叩きつける。
彼が一人暮らしをするマンションの鍵で、使わないというのに強引に預けられた。実際の所使ったことは一度もなく、別れる時に返し忘れていた物だ。会う機会があれば返そうと持ち歩いていた。
短い付き合いだったので誕生日もクリスマスもバレンタインやホワイトデーも越えていないし、貰った物が殆どないのは幸いだった。奢ってもらった食事や映画、花束にホテル代なんかは返しようがないし、返して欲しい物でもないはずだ。海外土産に貰った財布と名刺入れは使ってしまっていて返せないけれど、まあそれくらいは許されるだろう。
鍵を見て私の本気を悟ったのか浅利さんはようやく本気で焦ったように顔色を変える。