それが愛ならかまわない
「莉子、なんで……」
「もう一回言って欲しい?」
「い、いや……でも……」
「今の私はあなたに友情以下の感情しか持ってない。それが今後変わることもない」
とどめ。
さすがに私が本気で別れたいと思っていることは伝わったはずだ。言葉がきついのは認めるけれど、その分彼も目が覚めるだろう。いつまでも未練を残して引きずられるよりは嫌われた方がマシだ。
完全に沈黙してしまった浅利さんを前に私はゆっくりと背を向ける。
「さようなら」
彼が何も言わないのは私の剣幕にビビったのか、それとも打ちひしがれているのか。
言うだけ言ったので深呼吸をして周りを見渡すと、店を出たお客さんや通行人の視線が全て集まってた。
大声を出していたのだから仕方ない。おそらく皆キツイとか酷い女とか思ってるだろうけど、場所柄ホステスに冷たくあしらわれている客を目撃した事があるし、そこまで珍しい光景でもないはずだ。
その中でふとすぐ先のガードレールに腰掛けてスマホを弄っていたサラリーマン風の男性に目が留まる。
夜の闇に溶け込みそうな濃紺のスーツに、真面目そうなストレートの黒髪と眼鏡。
その彼が顔を上げた為、正面から視線が合った。