それが愛ならかまわない
「……うん、そうだね」
やけに淡白だと思えば意外とお節介だったり。嫌味を言ったその口で時折優しさを見せたり。その一瞬を逃すと踏み込めない、だからこそ私も素直な態度が取れずに回りくどい事ばかり言ってしまう。
「……今日もバイト?」
「うん、八時からラストまで入ってる」
「お疲れ。今更バイト行くなとは言わないけど……帰ってしっかり寝とけよ。じゃあ」
そう言って椎名が逆方向に歩き去ろうとする。皮肉のこもっていない、私を案じてくれている言葉が嬉しかった。
今この手を離したくない。
考えるより先に手がスーツの袖を引っ張っていた。慣性の法則で振り返った身体に顔を埋める様な形でしがみつく。
「慰めてよ」
自分の口から出た言葉に私自身が一番驚いた。けれど心の中とは裏腹に、ブレーキの外れた口が勢いよく言葉を紡ぐ。同時に下瞼が熱くなって、こらえる間もなく一気に涙が眼から溢れた。今更止められはしないけれど、どうせ社内じゃないんだからこの間みたいに隠れて泣く必要なんてない。