それが愛ならかまわない
「こんな惨めな気分じゃ寝たくても眠れない。頭真っ白にして何も考えずに眠りたい。手伝ってよ」
涙と同時に吐き出しているせいか、抑えているつもりでも声が震えているのが自分でも分かった。
人前で弱音なんて絶対吐きたくないと思っていたのに、結局椎名の前ではいつも弱みを見せてしまう。なのに素直になれずこんな捻くれた言い方しか出来ない辺り、プライドを捨て切れない自分がいる事も分かってる。それでも今は縋り付いたこの手を離したくない。
片思いの距離の詰め方としてきっと正しいのは溝口さんの方だ。私のやり方は反則技どころか自分を安売りしかねない。それでも。
俯いているせいで椎名がどういう顔をしているのかは見えなかった。いくら人通りの少ない時間だと言ってもここは真っ昼間の駅だ。きっと通行人にも見られている。駅で別れ際にいちゃつく恋人同士なんて珍しい光景じゃないから、大して気に留められていなければいいけれど。
黙ったままでいると、椎名のスーツの襟を掴んだ私の手に一回り大きな手が添えられるのが分かった。しばらくしてからゆっくりと手を解放させられる。
「こっちも眠いんだけど、睡眠導入剤の役割をしろって?」
「据え膳差し出されたら遠慮しない主義なんでしょ?お互い限界まで疲れたら、きっとよく眠れる」