それが愛ならかまわない
無茶を言ってる事も自覚してる。おまけにこれじゃただの泣き落としだ。
「……バイトの事考えたらそんなに時間ないだろ。どこ行くつもりだよ」
深いため息の後、そんな台詞が聞こえてきてそこでやっと私は顔を上げた。
いつも通り平然とした椎名の顔が目の前にあった。呆れられているんだろうな、と思うけれど少なくとも表情からそれは窺えない。
「じゃあ来て」
「どこへ?」
「私の家。残念だけど、前回みたいにお金無駄遣いする余裕はもうないから」
椎名の腕を掴んで有無を言わせず自宅方向へ歩き出す。何か言われるかと思ったけれど、意外にも椎名は素直に着いて来た。
途中水を買いたいと言われたのでコンビニにだけ立ち寄って、結局殆ど口を利かないままに黙々と歩き慣れた道を進んだ。確か前の時もそうだった。食事をした店からホテルまで、会話をした記憶が殆ど無い。緊張と少しずつ冷静になってくる気恥ずかしさとで何を話せばいいのかすら分からなかった。
「────着いた。ここがうち」