それが愛ならかまわない
「広いしバストイレ別だし、きちんと掃除しさえすれば綺麗だし。何より家賃が格安だから気に入ってるの」
「窓ガラスも普通のみたいだし、どっからでも侵入できそうなんだけど」
「盗られる様なものなんてないから。それにもう四年以上住んでるけどうちの部屋に限らずこのアパート内で何の問題も起こってない」
部屋の中まで入れたのは椎名が初めてなのだけれど、社会人になってから付き合った人の中にはこの家の前まで送ってくれた人もいる。その時も似たような事を言われたのを思い出した。こういう事を言われるのが面倒臭くて、適当に自宅の場所をはぐらかした経験も一度や二度じゃない。
こんな話になってしまうのはやっぱり場所が自宅だからだろうか。前回はホテルに入ってから余計な話を一切しなかった気がする。物が少なくあまり生活感はない部屋だけれど、ホテルと違ってそういう方向に持って行くにはどうしてもムードが足りない。
「素面じゃキツいか」
前の時はなんだかんだ二人共結構な量のアルコールを飲んでいた。ホテルに着く頃には冷めかけていたけれど、酒の勢いがなかったらきっとあんな事にはなってない。
さっきのコンビニで何かお酒を買ってくれば良かったと思いながら冷蔵庫から発泡酒の缶を二本取り出して、片方をスーツのジャケットを脱いだ椎名に手渡す。普段家で飲む習慣なんてないけれど、たまにどうしても飲みたくなる時がある。そういう時の為の非常用ストックだ。