それが愛ならかまわない
「えっ……ええ?!」
さっきの以上に予想外の問いが飛び出してきて驚いた。
「金融の方や他の同期の方に聞いても椎名さんって基本無口で誰ともあんまり喋らないし、女性と積極的に関わってるのも見たことない、そもそも目立つタイプじゃないから分からないって言われて。でも篠塚さんとは普通に喋ってたし……」
そこまで自力で調べてるなんて凄いな、と思わず感心しそうになった。
と言うかあれで普通に喋ってたとか言うんだろうか。二人の時ならいざしらず、溝口さんがいた食堂の時も売店の時も殆ど会話なんてしなかった気がするんだけど。私と普通に喋ってたというなら溝口さんなんてかなり親しい会話をしてた事になると思う。
確かに一度やってるし家に上げたりキスされたりしたけれど、その実私達の関係に明確な名前をつけようとしても現状では会社の同期の枠を出ない。今もし椎名と私がお互いに無関係な恋人を作ったとしても、それを相手に責められる間柄じゃない。ただ一つ明確に言えるのは、私の気持ちが椎名に向いているという事だけだ。
「……付き合ったりはしてないよ、これは本当」
溝口さんの大きな眼が給湯室の蛍光灯を反射して微かに潤んで見える。彼女みたいなタイプにこんな眼で迫られたら安田君じゃなくても簡単に落とせそうだ。私は女の武器も使える物なら使えばいいと思っている人間だけれど、天然でこれが出来る人には敵わないなあ、と頭の片隅でぼんやりと思った。