それが愛ならかまわない

「引っ越せば?」


「……何、唐突に」


 食事とは全く関係のない話題になって戸惑う私に対して、椎名は真顔を崩さない。


「バイト辞めたけどまだローン残ってるし、あれ以上家賃安い所なんて探しても早々ないから無理だってば。引越し代だって馬鹿にならないのに……」


「新しく部屋探すんじゃなくて、うちに」


「……」


 繁華街の古ぼけた雑居ビルの前。周りにネオンが綺羅びやかに輝いていても決して綺麗な場所ではないし、週末とあって人通りは多い。
 別に畏まって言って欲しい訳じゃないんだけど。ときめく要素がない訳じゃないんだけど。さすがに唐突過ぎるんじゃないだろうか。せめてもう少し言う場所を考えて欲しい。


「部屋に呼んだ事すらまだない出来たての彼女を同棲に誘うって色々展開早過ぎない?」


「でもバイトで稼いでた分を浮いた家賃で相殺出来るから合理的じゃないの。ローンの返済分、立て替えてもいいけどそれは嫌なんだろ」

< 280 / 290 >

この作品をシェア

pagetop