それが愛ならかまわない

 眺めていたモニターに映し出された文字がぼんやりと滲んだ。
 目を閉じてキリキリと刺し込まれるような感覚のこめかみを指の先で支える。痛みの波は暫く耐えれば引いていくのが分かっているけれど、分かっていても耐えるにはそれなりの精神力を必要とする。


 頭痛はこの所ずっと続いていた。寝てないわけじゃないのに身体全体が重い。最近バイトをがっつり入れているし、多分疲れているんだと思う。
 たまには休日にバイトも入れずにのんびりする日が必要かもしれない。どちらの職場にも迷惑をかけるわけにはいかないので、体調管理は私自身の義務だ。


「……篠塚。篠塚!」


「えっ、はいっ?」


 頭痛の波が治まっていくのと同時に、名前を呼ばれている事に気がついた。
 顔を上げるとすぐ隣に何かの書類を持った立岡さんが立っている。


「珍しいな、お前がボーッとしてるなんて。何か顔色も悪いぞ、大丈夫か?」


「いえ、大丈夫ですよー。すみません、考え事してました」


 どうにか眉間に寄った皺を隠し、笑顔を顔に乗せる事に成功した。困った事に頭痛のせいで集中力が切れている。

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