それが愛ならかまわない
飛び出した名前に驚いて思わず足が止まりそうになったのをギリギリで回避した。
椎名の名前の前に挟んだ意味深な間。そこに立岡さん達の評へとは違う何かを感じてしまうのは思い過ごしだろうか。
「椎名?あんなに無愛想なのに?」
「クールで仕事出来そうな人に見えました」
社内での椎名は眼鏡の奥にあの眼を隠し地味に徹していて、石渡君のような華やかさはない。愛想もなければ社交性もない。同期の集まりでもその他私の周りの女子社員からでも椎名の名前を聞いたことはなかったはずだ。現に私も最近まで名前も顔も認識していなかった。
ただ溝口さんは椎名と同じ技術職だし、何か通じる物があったりするのかもしれない。
「でも石渡さんは、篠塚さんを……ですよね?」
ニコニコと邪気のない笑顔で溝口さんが言う。
まずい。話の雲行きが怪しくなって来た。
初対面の彼女にすら指摘されるなんて、これも石渡君の露骨過ぎる態度のせいだ。
「いやー、そうかな?石渡君は女の子なら誰にでも優しいから」