風が、吹いた

今冷やしたばかりなのに、触れた指先が、熱い。



それを唇にあてて、もう一度深く溜息をついてから、店内に戻った。



それからは目まぐるしく時間が過ぎていった。



けど。



全てのものを出し終わってお客が帰っていくまで、私は一度も、椎名先輩の方を見ることができないままだった。



椎名先輩はきっとこんな私の態度を変に思っているだろう。



でも、だめだ。



このままでは、私は、友達以上を、彼に求めてしまう。




もう少し、頭を冷やさないと、いつも通りに振舞える自信はない。




ー今日は早く帰ろう。



静かにそう決めた。


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