風が、吹いた



最初の頃から、椎名先輩のことを気にしているのも、余所見の相手が椎名先輩だってことも、わかってた。


珍しいなって思った。



私が見てきたくらもっちゃんは、そういうの、なかったから。



誰かに興味を持つこともだけど、あれだけ有名な先輩相手ってことに。



なにがあったのかは知らないけど、どんどん出てくる彼女の表情に、喜ばずには居られなかった。



途中で浅尾が入ってきたのは予想外。



でも、浅尾がくらもっちゃんのこと目で追っていたのも事実。



浅尾は多分入学当初から、くらもっちゃんのことが好きだ。


椎名先輩のことで、一喜一憂するくらもっちゃんは、見ていて新鮮で可愛かったけど。



また表情が暗くなったのには驚いた。



椎名先輩が何を思って、くらもっちゃんに近づいたのかは知らないけど、最近一緒にいるところをみないなって、思っていた矢先に、これだ。



多分だけど、くらもっちゃんは自分で思っているよりも、椎名先輩に深入りしていたみたいだ。



私は個人的にはお勧めできなかったけど、人の心っていうのはその人のものだから仕方ない。



冷徹人間な彼の事を知らないっていうんだから、椎名先輩は、くらもっちゃんには鬼じゃなかったんだろう。



あの朝、暗い顔して、私の頬杖を注意してきたくらもっちゃん。



そろそろ何があったか話してくれないかな、と私は思っていた。



折角席がまた近くなったんだしね?



< 199 / 599 >

この作品をシェア

pagetop