風が、吹いた
「ねね。最近椎名先輩はどーしたのー?おとなしいよねぇ」
思い切って、訊いてみることにした。
「知らないし。元からただの友達だったし。」
何も言っていないのに、友達を強調する彼女。
本当に強がりだな。
「ふーん。それにしては元気ないね?くらもっちゃん。」
それだけ、顔に出てるんだから、はっきり言ってしまえば良いのに。
「…避けられてるみたい。」
もっと粘るかと思ったが、案外あっさりと彼女は白状した。
あの時から、様子はおかしかったのだ。もっと早く気づいてあげればよかった。
話を聴いていくと、どうも椎名先輩の『冷徹人間に豹変する瞬間』を目撃したらしい。
それはショックだろう。
でも、当人は大して気にしているようでもなかった。
と、いうことは、ショックを受けているのは、向こうの方か。
男なんてどいつもこいつも自分勝手で、自分のエゴでしか動かないんだから。
しまった。つい自分の彼氏のことで頭にきてたから。失言だったかな。
くらもっちゃんが相当なダメージを受けていることがはっきりとしたのは、バスケの時間に椎名先輩を見つけてから。
入学当初から、何にも関心を示さず、ポーカーフェイスだったあの彼女が泣くのを、私は呆然と見つめた。