風が、吹いた
「あー、少し、大きかったかな?」
居間に戻った私を見て、佐伯さんが呟いた。
つられて、私も首を曲げて、自分を見つめた。
正直、少し、どころではない。
厚めのトレーナーは、私の手を通り越して、軽く20センチは飛び出てるし、下に履いているものは、半ズボンらしいが、丈が私のくるぶしまである。ウエストはなんとかついている紐で縛ったものの、かなり大きすぎる。
「アメリカ行った時に、つい買っちゃったんだけど、帰ってきてみたら大きすぎてねぇ。あ、新品だから、汚くはないよ」
佐伯さんに大きいなら、私には尚更なんですが。
でも、きっと、慌てて探してくれたんだろう。
着れないわけじゃないし、制服は乾燥機で乾かしてくれているから、帰りは着替えられるだろうし。
下着は、我慢する。少し気持ち悪いけど。
そんな心の葛藤を、文字通り心の中だけで処理して。
「大丈夫です。ありがとうございます」
と、お礼を言った。
暖められた部屋に、こじんまりとあるテーブルの上には、いつものように湯気の立つカップが置かれていて、それだけで込み上げてくるものがあって、視界がぼやけた。