風が、吹いた
「これで、最後にするから」
頭の後ろと背中に回された浅尾の掌が、腕が、壊れ物を扱うみたいに優しく抱き締める。
わかんない、わかりたく、ない。
けど。
浅尾の意思は、変わりそうにない。ということは、わかる。
ぽろぽろと、浅尾への罪悪感のようなものが、涙になって零れてくる。
「私…浅尾を、傷つけちゃったの?」
私は、絶対に、浅尾を傷つけないと、決めたのに。
ぽん、と優しく頭を撫でられた。
「傷ついてなんか、いないよ」
優しい嘘を、彼は吐く。
「我が儘になれよ。」
お願いだから、と掠れる声で、彼は言った。
その表情は、私には見えない。
「自分を押し殺すな。もう、いいから。」
少し、名残惜しそうに絡める腕を解いて彼は言う。
「もしも、思い出したら、我が儘を通せ。その時は、俺が力になってやる。なんてったって俺は…」
横を通り過ぎる際に、私の肩をぽんっと叩いた。
「友達だからな。」