風が、吹いた

私が反応するより前に、予鈴が鳴る。




「じゃ、またね。」




それが合図だったかのように私にひらひらと手を振りながら、先輩はそう言い残して、階段を上っていった。



私も慌ててその後を追う形で、自分の教室に向かう。


浅尾がさらに後を付いて来る。



教室に入ろうとすると、浅尾がかがんで。



「椎名先輩、知らなかったんじゃなかったの?」




と訊いてきた。




「昨日までは、ね。」




私は、思い切り冷たい一瞥を浅尾に投げて、窓際の席に向かった。
< 86 / 599 >

この作品をシェア

pagetop