風が、吹いた
私が反応するより前に、予鈴が鳴る。
「じゃ、またね。」
それが合図だったかのように私にひらひらと手を振りながら、先輩はそう言い残して、階段を上っていった。
私も慌ててその後を追う形で、自分の教室に向かう。
浅尾がさらに後を付いて来る。
教室に入ろうとすると、浅尾がかがんで。
「椎名先輩、知らなかったんじゃなかったの?」
と訊いてきた。
「昨日までは、ね。」
私は、思い切り冷たい一瞥を浅尾に投げて、窓際の席に向かった。