風が、吹いた








小澤のHRが終わると、途端に教室内が賑やかになる。



1限目から移動教室だった。少々億劫に感じながらも、教科書とノート、筆記具を持って、旧校舎の方へと向かう。



旧校舎には、音楽室や美術室などが入っており、主に多目的な活動のために使われている。そしてそこへ行くのには、2階の渡り廊下を通っていかなければならない。



椎名先輩が何組なのかは知らないが、3年生の教室の近くを通ることになる。



いつもは考えたことなかったのに、自分は『友達』が気になって仕方ないらしい。




「倉本」




下に降りようと、階段に足をかけた所で後ろから呼ばれ。




「一緒にいこーぜ」




振り返ると、浅尾が居た。



「…やだよ」



ふいと顔を背けて、歩を進めるが。




「倉本って俺のこと嫌いなの?」




浅尾は怯むことなく、付いて来る。
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