風が、吹いた




教室に着いて中に入ると、自由席らしく、必然的にというべきか、浅尾と隣に座ることになった。




「…私、ひとりがいいんだけど。。」




と一応言ってみるものの、浅尾の耳には届かないみたいだ。




「さっきの続きだけど。」




授業が始まって、しばらくすると、浅尾がひそひそと話しかけてくる。




「友達っていうのは、どうでもいいような話したり、たまには大事な話をしたり、一緒に何かやったり、泣いたり笑ったりするものだと思うよ。時々けんかもするから、面倒な存在でもあるけどね。」




「…面倒、なんだ。」




私が呟くと、先生の目を盗みながら、浅尾がこっくりと頷いた。




「人との繋がりなんてさ、皆面倒、なんじゃねぇ?」




にやっと笑う。




「だけど、ひとりじゃ、だめなんだよ。それが人間ってもんだと俺は思う。」



「…偉そうに」



「うるせーよ」





自分が出せない答えをいとも簡単に言ってのける浅尾に、少し嫉妬した。



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