風が、吹いた




「俺、先行くわ。」




「え?」



突然背後にいたはずの浅尾が、そう言って私の傍を通り過ぎて行く。



私は、浅尾のその行動の意味する所がわからず、ただ、目で追うしかなかった。





「朝も一緒にいたね。」




浅尾の姿が見えなくなると、独り言のように先輩が呟いた。




「なんかわかんないけど、ついて来るんです。」




3年生は前の時間、自習だったらしく、廊下から見える教室の中は、それぞれが活動していた跡があった。
< 94 / 599 >

この作品をシェア

pagetop