風が、吹いた




「ふーん…そっか。ねぇ、今日さ、佐伯さんとこ、お休みでしょ?」




訊いてきた割には、そっけない返事をして、先輩は話を変えた。



今日は火曜日なので、佐伯さんのカフェは休み。よって、私たちバイトも休みだ。



肯定を表して頷くと。




「千晶はバイト休みの午後、何をしてるの?」




また質問される。




「…本読んだり、寝たり、買い出しにいったり?」




「なんで疑問系なの。」


自分でもよくわからなくて、考え考え口に出せば、笑われた。







「俺、今日図書館行きたいんだけど、帰り行かない?」



「えっ…」


ーこれは、もしかして、放課後を友達と過ごそうという高校生的スタイル?のお誘いなのだろうか。



どうせ、家に帰っても、誰も居ない。



「行きたい、、です。」




寂しいことを自覚できた私は、人が恋しく、そして素直なのだ。



迷うことはない、はず。



なのに。



言ってしまった傍から。




―椎名先輩はやめたほうがいい




さっきの浅尾の言葉が、隅から這い出してきて、正体不明の暗い気持ちが、心を支配してしまいそうな感覚に襲われた。
< 95 / 599 >

この作品をシェア

pagetop