☆Friend&ship☆ -序章-
「はじめてみた…こんな拷問器具」
「誤解だ」
内側に針がついた手袋を見てゼウスが顔をしかめる。
ヘルメスは顔色一つ変えずにいったんいつもの黒手袋を外しそれをつけた。
何度か握ったり開いたりを繰り返すと隙間から真っ赤な血があふれた。
「ったく…ざけんな」
「別に無理してやる必要は…!」
と、しっかり嵌めたゼウスを見てヘルメスは辛そうに目を見張る。
「次ブーツ?」
「…一つしかないからやめろ」
「いいじゃん、半分こしよ♪」
ヘルメスは躊躇して左足をそのブーツに突っ込んだ。
ドクドクと波打つ心臓を静めながら無感動を装って右足を渡す。
ゼウスは嬉しそうに迷いなく右足を入れた。
「お揃い~♪」
「…」
黙ってヘルメスは奥の部屋に入って行った。
「…やっぱ拷問器具だろ?」
「だから誤解だと言っている」
恐ろしげな音を立ててうねる鉄のバットがぐるんぐるんと張り巡らされていた。
「何なのこれ~」
「当たれとは言わない。くぐって行くだけだ」
「……………」
「危ないから帰れ、キング」
怪しくて妖しい笑顔で笑いながら嗤うキング。
「……」
ニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコ…
にこにこにこにこにこにこにこにこにこにこにこにこ…
「どったの?」
「なんでも…」
嫌になってきたヘルメスは笑顔を締め出して飛び出した。
「そこ飛べ」
「あいよ」
「屈め」
「わーってるって!」
「集中しろ」
「いっつもこんなんやってんの?」
「だからなんだ」
「危ない」
「…っ」
「ヘルメスっ!」
ふざけている場合ではない。
足を直撃されたヘルメスは吹っ飛び死にそうな顔でゲホゲホと唾を吐く。
その間にもタコ殴りに遭うヘルメスは次々と手足が変な方向へ曲がっていく。
ゼウスはわざと足を殴らせ吹っ飛んだ。
「ぐっ」
想像以上の衝撃に顔を歪めて、それでもヘルメスに近づいていく。
肩を揺さぶればすでに意識は飛びかけている。
緊急の出口はなさそうだった。
舌打ちしてゼウスはヘルメスを抱えてスタートへ向かった。
全身の骨が粉々直前のヘルメスは力無くぼうっとしていた。
「んーあ!!」
「どうした?…はぁ、無茶したか」
「手当プリーズ」
「医務室」
「はーい」
ものすごく軽い乗りで連れていかれたが、キングの真剣な目はすでに医者だった。