狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録
一方、学園の保健室では――。



「……? お父様では無理って……」



―――ドォオオンッ!!



言いかけたアオイの視界の端で城から打ち上げられた光弾が眩い光を発し、はじけ飛んだ。


「あれは……」


思わず窓の外を見つめ、光弾の色に驚き体が震える。


「……銀と、赤の光弾……」


アオイの言葉に同じく視線を外へと向けたセンスイが意図を察したように口を開いた。


「差し詰め……アオイさんが攫われたという情報を王に伝令するためのものでしょうか……」


「……きっと……そうです……ごめんなさいセンスイ先生。大事(おおごと)になってしまって……」


「アオイさんが謝る必要はありません。私が宣言して貴方をここへ連れてきたのですから」


ふふっと笑うセンスイからは焦りなどという感情はどこにもなく、それどころか……腰を落ち着け、今も隣りでアオイの手をしっかりと握りしめているのだった。


「……先生、ここは危険かもしれません。お父様が探しに来る……」


「大丈夫です。私の心配はいりません。それより……」


握りしめた手に力を込め、真剣なまなざしで顔を近づけてくるセンスイ。



「……やはり貴方をここに置いておくことは出来ない。もう……キュリオ殿の事はよいでしょう? ただの父上なら尚更……」



「……え? ……でも、先生には好きな人がいるって……」



センスイの言葉に戸惑い、体を硬直させるアオイ。



「貴方がいれば……きっと私の運命は変わる。どうかアオイさん、私と共に……ひとつの未来を夢見てくださいませんか?」





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