狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録
「こんなところで何をしている…マダラ」

「あれー、言わなかったっけ?夢と冥界って密接なつながりがあるんだよ?つまりー…」

「…貴方が冥王マダラ殿ですか」

冥王の顔を記憶に刻もうと、マダラを凝視しているセンスイ。そして彼の視線に気づいたマダラは…

「ずっと見てたけど…君って不思議だよねぇ…」

意味深な言葉を呟いたマダラだが、学園の崩壊はすすみ、彼ら足元は暗闇に染まりつつあった。

「んー、思ったより時間がないみたいだ」

呑気にあたりを見回す冥王にキュリオが問う。

「…時間がないとはどういう意味だ?」

「さっきも言ったけど…ここは夢。これを構成している四人のうち、この夢が気に入らない人物が目覚めようとしてるって事」

「…この夢が気に入らない人物?…まさか…」

ベッドに横たわったまま、悲しみの表情を浮かべているアオイの瞳は固く閉じられ、まったく起きる気配はない。

「んー…僕はそろそろ戻るよ。夢が分離しそうな気がするからね」

ひらひらと手を振りながら、あっという間に闇とともに姿を消してしまったマダラ。

「…分離?」

訝しげな表情でアオイを抱き上げたキュリオは、一度学園から離れようと翼を広げたが…

「…これが夢とは…」

完全に闇へと染まったその空間から逃げ出せず…センスイとともに暗闇の底へと沈んでいったのだった―――

「……」


キュリオが薄く目を開いた。
見慣れた天蓋ベッドの天井をぼやけた視界にうつし、まだ覚醒していないらしい意識を賢明に呼び覚ます。


「…ここは…」


(どうやら…私の部屋のようだな)


あれほど鮮明だったのにも関わらず、夢だと言ったマダラの言葉は本当だった。そしてにわかには信じられない夢での出来事。本来、夢とはその人物の経験や過去の記憶をもとに生成されるものであって、出会ったことのない人物や背景が出てくるのは全く別物のような気がしてならない。


(センスイ…)


あの後、暗闇の底へと沈んでいったキュリオ、アオイ、センスイの三人はマダラの言った"分離"という言葉通り…どうやらいくつかに別れてしまったようである。

額を押さえながら順を追って記憶を呼び覚まそうとしていたキュリオだが…


"ここは夢。これを構成している四人のうち、この夢が気に入らない人物が目覚めようとしてるって事"


「…っ!!アオイッ!?」


愛しい娘の名を叫び、勢いよく上半身を持ち上げたキュリオの指先に柔らかいものが纏わりついた。


「…っ…」


視線を下げたキュリオの真横。月に照らされた柔らかい毛色の髪が少女の肩からしっとりと滑り落ちている。透き通るような白い肌が反射し、あどけなさを残す少女の横顔がとても大人びいて見えた。そして当の本人はというと…

健やかな寝息を立て、こちらに身を寄せながら体を小さく丸め眠っている。


「アオイ…」


焦りに萎縮した体をキュリオはほっと落ち着かせ、アオイの肩にシーツを掛け直しながら横になる。


いつものように向かい合って顔を寄せながら彼女の頬を撫でた。


(あれからどれだけの時間が経過しているのだろう…)


「何にせよ…君が無事でよかった…」


キュリオの記憶から徐々に薄れゆく夢での出来事。しかし…いつ、いかなる場所においてあっても…彼の中で真っ先に重要視されるアオイの存在。


(エクシスが夢を支配する王ならば…)


(マダラは夢を…覗いているのだろうか…?)


あの夢を構成していた四人という話も気になる。おそらくキュリオ、アオイ、センスイの三人は間違いない。

残りの一人がアレスやカイ、もしくはシュウというあのヴァンパイアとのハーフの少年なのか…もしくは…


(センスイという男側の人物か…)


そもそも夢とは個人のもので、複数の人間の夢が合わさるという話もなかなか理解しがたい。


(マダラの姿さえもただの偶像だったとすれば…あの夢自体、私が勝手に作り上げた架空のものという仮説も成り立つ…か)


頭の良いキュリオだが、今は憶測の域を越えることは出来ず…隣りに眠るアオイの顔をじっと見つめ、夢を思い返す。


"…お願いですお父様っ…!"


耳と瞼の裏に残るアオイの悲痛な叫び。何事も賢明に取り組む彼女が他人の心配事をほおっておけないのはわかりきっていた事だ。


ただ、その"他人の心配事"が…もし彼女の手に負えないほど大きな問題だったらやっかいなのだ。それを自分に相談してくれるならまだしも、今回のようにキュリオが拒絶した場合…


「アオイのその優しさがいつか…君自身を滅ぼしてしまいそうで怖い…」


縁起でもない事を口にしてしまったキュリオだったが、その言葉があながち的外れではない事をいつか知る事となるのだった―――





< 91 / 91 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:8

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

総文字数/260,401

ファンタジー212ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
New!2/24 画像を追加させていただきました。 (タイトルの後ろに ※あり) ―――すべての女性に捧げる 乙女ゲームのような恋物語――― 『狂気の王と永遠の愛(接吻)を』 五大国から成る 異世界の王とたった一人の少女の織り成す 恋愛ファンタジー ――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。 彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。 この物語は悠久の王・キュリオの前に現れた幼い少女が主人公である。 ――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され……すべてが大きく変わるだろう。そして…… その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない―― 出会うはずのない者たちが出揃うとき……その先に待ち受けるものは? 最後に待つのは幸せか、残酷な運命か―― そして次第に明らかになる彼女の正体とは……? 2016.11.14 Start ~ ★☆★こちら【第一章】 狂気の王と永遠の愛(接吻)を は、 狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一章】の加筆改正版 となりますのでよろしくお願いします★☆★ 作品番号:1362801 にて 【第二部】の連載がスタート致しました。よろしくお願い致します(*'-'*) *★*―――――*★*―――――*★**★*―――――*★*―――――*★* 【同時進行中・関連ストーリー】 ◆狂気の王と永遠の愛(接吻)を イメージ画集とつぶやきの場(イラスト有) ◆【ファン登録様限定】狂気の王と永遠の愛(接吻)を・シークレットストーリー ◆狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~ ◆狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録(本編での+α部分まとめ)
【第二章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

総文字数/284,408

ファンタジー168ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
【第二章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を ―――すべての女性に捧げる 乙女ゲームのような恋物語――― 五大国から成る 異世界の王とたった一人の少女の織り成す 恋愛ファンタジー ―――この世界は強大な五大国と、各国に君臨する絶対的な『王』が存在している。 彼らにはそれぞれを象徴する<力>と<神具>が授けられており、その生命も人間を遥かに凌駕するほど長いものだった。 そしてその力の性質をあらわす二つ名が存在し、しばしばその名で呼ばれることもある。 <夢幻の王>エクシス <慈悲の王>キュリオ <心眼の王>マダラ  <革命の王><雷帝>エデン <紅蓮の王>ティーダ 【第一部】あらすじ 五大国・第二位、心優しき悠久の王キュリオの手によって助け出された身元不明の赤子アオイ。 キュリオは彼女の身元を調査するべく他国へと使者を派遣するが、それぞれの王の返事は意外なものだった―――。 ―――世界が"何か"を望んだ時、必ずその力を持った人物が生み出され…すべてが大きく変わるだろう。そして… その"世界"自体が一個人の"誰か"かもしれない――― 先代・セシエル王の言葉を思い出しながら数奇な運命のもとに生まれた幼子・アオイを守ろうと決意するキュリオ。 そして【第一部】で見え隠れした謎の人物・センスイらの存在。 出会うはずのない者たちが出揃うとき…その先に待ち受けるものは…? そして最後に待つのは幸せか、残酷な運命か―――。 前作:【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を 作品番号:1126950 【同時進行中・関連ストーリー】 ◆狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~ ◆狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録(本編での+α部分まとめ) ◆狂気の王と永遠の愛(接吻)を イメージ画集とつぶやきの場(イラスト有) ◆【ファン登録様限定】狂気の王と永遠の愛(接吻)を・シークレットストーリー
表紙を見る 表紙を閉じる
【狂気の王と永遠の愛(接吻)を】 【シークレットストーリー】 New! 9/3更新しましたっ(・∀<*)-☆ ❤こちらはファン登録者様限定公開のシークレットストーリーです。本日9/3よりパスワード無しの設定へ変更したため、逢生ありすへファン登録してくださった皆様へお待たせすることなくお読みいただけるようになりましたっ(〃Д〃人)今度とも是非よろしくお願いいたします❤ ◆本編とはまた異なる時間の流れを行く物語ですが、決して"もしも"の物語ではございませんっっ ◇キュリオ様が❤大好き❤な方にオススメなシークレットストーリーとなっております(*'ω'*) ※キュリオ様が浮気されるお話などではないので安心してご覧くださいっっっ!! 日頃の感謝を込めまして、ファン登録してくださった皆様にへとお礼を含めた物語枠でございます(´,,>ω<,,`) ❤新たにファン登録してくださった皆様へ❤ 登録者様が一定に達しましたらご挨拶メールを配信させていただきますので少しお待ちくださいねっ('-^*)-☆

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop