【短】壁ドン シミュレーション
「壁ドンは今、ちまたで人気なんだよ」
「へぇ」
相変わらず素っ気ないけど、私の持っている雑誌の中を覗き込んでいた。
明らかにさっきとは違う反応。
――面白い。
「でもイケメンに限るってさ」
「だろーな」
うーん。確かに。
これは悩みどころだ。
「――え、」
雑誌に載った壁ドンのデータに関する記事が目に留まる。
「なんだ」
「壁ドンって犯罪になり得ることもあるんだって」
「いい男がやればいいんじゃないのか」
「相手が訴えなければいいんじゃない?」
壁ドンに期待していた訳ではないけど、それを聞くとなんとなく幻滅する。
そりゃあ壁にドンですから…、見知らぬ人に突然やられたら、さぞ怖いに違いない。
やっぱり壁ドンの良さがわからぬ。
友人に聞いても、母親に聞いても、格好いい人がやればいいもんだって言われたけれど。
全く、想像がつかない。