【短】壁ドン シミュレーション


「壁ドンは今、ちまたで人気なんだよ」


「へぇ」



相変わらず素っ気ないけど、私の持っている雑誌の中を覗き込んでいた。


明らかにさっきとは違う反応。


――面白い。



「でもイケメンに限るってさ」


「だろーな」



うーん。確かに。


これは悩みどころだ。




「――え、」



雑誌に載った壁ドンのデータに関する記事が目に留まる。




「なんだ」


「壁ドンって犯罪になり得ることもあるんだって」


「いい男がやればいいんじゃないのか」


「相手が訴えなければいいんじゃない?」




壁ドンに期待していた訳ではないけど、それを聞くとなんとなく幻滅する。


そりゃあ壁にドンですから…、見知らぬ人に突然やられたら、さぞ怖いに違いない。



やっぱり壁ドンの良さがわからぬ。


友人に聞いても、母親に聞いても、格好いい人がやればいいもんだって言われたけれど。


全く、想像がつかない。




< 3 / 11 >

この作品をシェア

pagetop