杉下家の平和な日常~姉編~
例えば私の機嫌が悪くて、たまたま部屋にやってきた弟にいきなり枕を投げつけても、彼氏と喧嘩した腹いせに殴りかかっても、やり返してくることはなかった。

身体の大きさがあまり変わらない小さな時はよく取っ組み合いの喧嘩をしたが、身長を追い抜かれてからは絶対に手を出してこない弟。

我が弟ながら、かなり辛抱強いと思う。

そんなことをしながらも、基本的に仲はいいと一方的に思っている。

我が家の中で私を母よりも上の1番にしてくれるのは弟だけだった。

つい突っかかってしまうが、それを許してくれてしまうから。

許してくれるのを知っているから、甘えてしまう。



仲がいい両親でいてくれることは大変ありがたかった。

しかし、小さいころから、父の一番は母で、母の一番は父であることは揺るぎなかった。

だから、どこの家庭でも見られる『将来はパパのお嫁さん』というのを1度しか言わなかった。

間違いなく嬉しかったと思う。父の顔はよく覚えている。

でも、やんわりはっきりと振られたのだ。

母の次に愛しているけれど、父のお嫁さんにはなれない。

そして、母のように私を1番に思ってくれる人を見つけなさいと。

今でも子供相手に大人気ないと多少思う。

3歳にして初めての失恋を経験。まあ、恋ではなかったが。

両親を悪者にしたいわけではない。

それが教育方針であり、家庭の方針なのだから。

父が父なら、母も母で、弟のプロポーズをやんわり断ったところ、『お姉ちゃんをお嫁さんにしてあげる』と言われたときは、絶対弟の味方でいてあげようと思ったものだ。

その時に感じた愛おしさは今でも覚えていて、大好きだと豪語している。

弟にしてみればいい迷惑かもしれない。

攻撃的な愛情表現を受けつつも弟は我が侭を言いたい放題させてくれるが、彼氏にそれをすることは難しかった。

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