君の名を呼んで 2
***

会社から車で30分程の小綺麗なマンション。
かなり広めの1LDK。
そこが私と、城ノ内副社長こと皇のいわゆる愛の巣ってやつだったりする。

けども。


「あ、あの、皇?私なんで縛られてるんでしょうか」

愛の巣、なんかとんでもない事になっちゃってます。

確か私は帰宅して、着替えようと寝室のドアを開けて、……その瞬間、ベッドに放り投げられて、頭上の柵にネクタイで両手首をくくりつけられた。

犯人は勿論、私の愛する旦那様(のはず)だ。


「ん?だってお前、逃げるだろ」

「それは逃げられるような事をするって意味でしょうか」


彼のとんでもない言動には慣れたものの、まさかこんな手段に出るとは思わなかった。

「ただの事情聴取だよ、事情聴取。素直に言えば、ご褒美やるぜ?」


私を覗き込んでそう言う皇は、悔しい程色気に満ちていて、
今されている事を忘れそうになる。

「事情聴取って、なんの?」

「お前、今日妬いただろ」

……。
……。

あ。


「な、何のことでしょう」

「雪姫てめえ、本気で忘れてやがったな」

だって!色々明日からの準備で忙しかったんだもん!!

「ヒトがせっかくヤキモチにつき合って、可愛がってやろうと思ったのに」

はあ、とこれ見よがしな態度でため息をついて、皇は煙草を手にする。

「え、ちょっと待って、吸いに行くの?」


彼は私と住むようになってから、煙草はベランダで吸ってくれるようになった。
いつもは嬉しいその気遣いも、今は完全にイジメですよね!!
このまま放置して行く気だ!!
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