君の名を呼んで 2
side ナナミ

資料室で抱きしめ合う城ノ内さんと梶原さんを見て、私はそっと扉を閉めた。
私が城ノ内さんを呼び出した日のことを思い出す。

あの日。


***


ーー不意打ちに奪おうとしたキスは、城ノ内さんの片手に阻まれた。
私の口を押さえた彼の手を外して、訴える。

「傍にいて下さい。お願い、私を城ノ内さんのものにして」

夢中で言った言葉に、城ノ内さんは眉根を寄せた。

「今日呼び出したのは、ワザとか」


そう、私は知っていた。


「雪姫の誕生日ってのも知ってたな」


彼女自身に聞いた、梶原さんの誕生日。
二人で休暇を取っていたのを知っていた。
旅行先は近場だから、私に何かあれば城ノ内さんが来てくれる。

『城ノ内さんは、お前を選ぶ』

ーーそう、月島要に言われたんだ。

彼に言われて、わざと兄に反抗した。
まさか殴られるなんて思ってなかったから、半分は演技じゃなく本気で怖かったし、家族に嫌われてることを実感して、辛かった。
けどそれが城ノ内さんを私の元へ寄越してくれたから、結果的には思い通りーー。



彼へ答えずにいたのが、答えになった。
チ、と舌打ちが聞こえて。

「ならこっちも遠慮することはねぇな」

「っ!?」

軽い痛みと、衝撃。
城ノ内さんは私の両腕を掴んで、ベッドに押し倒した。
隠しもせず怒りをあらわにした表情は、私が初めて見るもので。

ーーえ?

戸惑い、焦る私に彼は囁いた。


「望み通り、抱いてやろうか」


端正な顔立ちで見下ろす目は、背筋が凍るほど冷たく軽蔑に満ちていて。


「ただしその瞬間から、お前は俺にとって何の価値もないタダのオンナになるがな」


掴まれた手首が折れそうなほど軋む。
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