君の名を呼んで 2
私は、皇の“特別な女”で居たかったんだ。

理解があって、彼を支えて、仕事でもプライベートでも寄り添えるような。
けれど実際は、私が彼に支えて貰うばかりで。ただただ無力で。

皇の初恋の相手だとか、彼の名前のトラウマをぶち破ったとか、彼の家族との架け橋になったとか。
皇は私に救われたって言うけど、私は伝説の聖女でもなんでもない。


「私は、嫉妬や我儘を言う普通の女なんです」

それをあなたに、気付かれるのが怖かった。


「俺は自分がワガママだからな。女のワガママは好きじゃない」

皇の言葉にほらね、と言いかけて、

「だから、お前だけだ。我儘も面倒も許すのは」


そう言われて、言葉に詰まった。
皇は私の頬を両手で包み込む。


「普通かどうかはかなり疑問だが、お前が鈍感馬鹿女なのは知ってる。今更みっともなく泣き叫んだって、そんなんで引くか。お前の旦那様ナメんなよ」


私は、言ってもいいの?
我儘になってもいいの?


「どうして欲しいんだ、雪姫。ちゃんと俺に言え。俺の前で演技をするな。嘘をつくな。
無理を、するなーー」


辛そうに、切なそうに歪められたその表情と、皇の絞り出すような低い声に、抑えていた感情が噴き出して。
あっという間に涙と共に溢れ出す。


「私だけを見て」

「ああ、見てる」

「愛してるって言って」

「愛してる、雪姫。お前しかいらない」

「指輪を……して下さい」

「……やっと言ったな」


重ねられた唇が熱くて。


「好き」

「……ああ、知ってる」


いつもならそこで終わるはずの言葉は、私の首に顔を埋めて表情の見えない、皇の艶めいた低い声で続いていく。


「お前が思ってるよりずっと、俺はお前が必要なんだよ。……分かれ、馬鹿」


ねぇ、皇。
泣いてるの?


初めて見る、彼の姿に。
私は皇が愛しくて愛しくてたまらなかった。
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