重い想われ 降り振られ
幸治の乱暴な手が、真理子の胸を服の上から掴んだ。

抵抗しない真理子を確認した幸治は、真理子の背中に手を回す。

ワンピースのチャックがゆっくりと下された。

真理子の瞳から涙がこぼれる。

脳裏に橘の顔が浮かぶ。

大好きだったあの腕の中ではない、違う男の腕の中で真理子は覚悟をした。

ワンピースの袖が抜かれ、上半身が露わになる。

ぎゅっと固く瞑った瞳に、さらに力を込める。

『嫌だ!誰か・・・橘さんっ!』

真理子は心の中で必死に悲鳴を上げた。

「下衆が!・・・汚ねぇ手で人の女に振れんじゃねぇよ!」

幸治の襟元を後ろから掴み、幸治は和室まで吹っ飛ばされる。

「お前ごときが触れていい女じゃねぇんだよ!」

何が起きたのか分からないまま、幸治は乱入してきた男を見上げた。

目を開いた真理子の前に立つ男の顔は、真理子が一番知っている顔だった。
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