重い想われ 降り振られ
「僕も覚えているよ、藤沢幸治くん。」

久しぶりに見る小林は、眼鏡をかけたままのスーツ姿だった。

「小林さん!」

再び真理子は驚く。

部屋に訪れた小林を見て幸治はフンっと鼻で笑う。

「お前ら勝手にこんな所にまで入り込んでいいと思ってるのか?
ここは俺んちの旅館だぜ?自分んちの敷地内で俺が何をしようが勝手だろ。
しかもその女は俺の婚約者だ。ついさっき決まったばっかりだけどなっ。」

幸治は、文句ないだろうと言わんばかりに威張りたおす。

小林はそんな幸治に向かって、冷静に話をする。

「君は知らないんだね。ここの旅館はすでに僕達が買収している。
経営権もすでに僕達が握っているんだよ。言わばここの社長も女将も、
今現在は僕達に雇われてる身だ。君こそ部外者なんだよ。」

小林に続けて橘は言う。

「婚約者?たかだか300万弱の借金を形に、無理やり納得させただけだろ?
だから下衆だって言ったんだよっ!」
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