拾った子犬(系男子)は身元不明
3.元の場所に返します
ピピピピッピ


携帯のアラームで目が覚める。


「うーん・・・」


自分の携帯だと思ったのか、夏樹君がごそごぞと携帯を探している。


「おはよう・・・」


私が声をかけると、携帯を探す夏樹君の手が止まった。


貞子が這い出るような格好のまま止まっている夏樹君。


それから、ゆっくりと起き上がり、


「おはようございます」


と、言った。


「うちに、泊まってた事忘れてたでしょう?」


今の不自然な停止は、昨日の事を思い出していたんだろう。



ちょっと意地悪な事を言ってやった。


「・・・ちょっと寝ぼけてたんです。」



否定とも肯定とも言える返事だった。



「何時に出るの?」


「あ、もうすぐ出ます。」


まだ、7時だ。きっと気を使っているだろう。


「パンくらいならあるよ?」


ぐぅ〜


「・・・・・・・」


「・・・・ぷっ!あははは。あり得ない。
 
 昨日もお腹ならなかったっけ?」


「・・・普段はこんなになったりせぇへんもん。」


不思議な寝癖の夏樹君が拗ねて、口を尖らせながら言う。


敬語もぬけた関西弁に不覚にもきゅんとしてしまった。


クソッ!イケメンめ!!


「私、今日休みだから、都合のいい時間までいてもいいよ。」


「え??会社休みなんですか??それなのにこんな早くに起こしてすいません!」


「いいよ。多分、会社だったら、昨日は声をかけてなかったし。」


「オレはラッキーやったんですね!」


良い笑顔で首を傾げながら微笑んだ夏樹君は、やっぱりイケメンだったが、首を傾げた振動で、フワフワと揺れる不思議寝癖がおかしかった。
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