拾った子犬(系男子)は身元不明
そのまま玄関でへたり込む私。


夏樹君は、隣の人の従兄弟じゃない??


どういうこと??


さっきの人が嘘を言っている様には見えなかった。


じゃあ、夏樹君が嘘を付いたって事??


でも、あの状況で、嘘などあり得るのだろうか?


彼の潤んだ目を思い出した。


夏樹君が嘘を言ったとも思えない。



・・・何が何だかわからない。



もういい。考えるのはやめよう。


考えたってわからない。


明日も仕事だ。ご飯食べて寝よう。


私は、靴を脱いで部屋に入った。


シャワーをあびて、こたつのスイッチを入れる。


買って来たコンビニ弁当を温めて、テレビをつけた。


「今日、T大学では、合格発表が行われ、自分の受験番号を確認しに、大勢の受験生がT大学を訪れました。」


テレビの音に思わずソレを見ると、運動部らしき人たちに、合格した子が胴上げされていた。


弁当を食べるのも忘れて、画面を食い入るように見つめる。



だが、夏樹君を見つける事は出来なかった。



・・・アホらしい。


隣人の従兄弟で、高校生の夏樹君。


それしか彼を知らなかったのに、隣人の従兄弟というのは嘘だった。


名前しか知らない高校生。


それって何も知らないのと、一緒じゃん。


でも、これで良かったのかも知れない。


だって、私は26歳の社会人で、彼は18歳の春からT大生予定だ。


冷静に考えると色々違いすぎて笑えて来る。



これ以上、何か起こるはずが無い。




たかだか数時間一緒に過ごしただけの高校生だ。もう忘れてしまおう。
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