拾った子犬(系男子)は身元不明
それからの私は、夏樹君を記憶のかなたに押し込めた。


もともと何かあったわけじゃない。


そんなに難しいことでは無かった。


コンビニで、赤い箱を見ても何も思わなくなった。


帰りの息が白くならなくなったある日、私が家に帰ると、黒い塊が私の部屋の前にあった。



どきどきどきと、心臓があり得ない早さで動く。


カツカツカツ。


ゆっくりと、でも立ち止まる事無くソレに近づく私。


すると、私の足音に反応したソレがゆっくりと顔を上げた。


「・・・」


「おかえりなさい。」


驚いて何も言えない私に、彼はにっこりと微笑んだ。


「絶対、会いに来るっていいましたやん。

 信じてかなったんですか??」


「だって、だって、従兄弟じゃなかったじゃん・・・」


訳がわからない私は、何だか良くわからないことを言ってしまった。


「お礼もあるし、色々説明しに来たんです。」


ちょっと困った様に笑う夏樹君に思わず見とれてしまった。


「いつから、待ってたの?」


暖かくなって来たとはいえ、まだ夜は冷える。


少し潤んだ瞳と赤い頬に心配になった。


「大丈夫です。前ほど待ってませんから。」



「と、とにかく入って。ここじゃ寒いから。」


「お邪魔します。」


私は、夏樹君を招き入れた。
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