拾った子犬(系男子)は身元不明
・・・いやいやいや。私が心配することじゃない。


今の時代、携帯だってある。何も無い田舎じゃあるまいし、ちょっと移動すれば泊まるとこなんて、いくらでもある。


もう、寝よう。



私は布団に入った。


明日は休みだ。朝寝坊して、洗濯して、掃除しよう。


よし、寝よう。もう、寝よう。


・・・・・・・・


ガバッと起き上がった。


駄目だ。やっぱり、気になる。


私は、パーカーを羽織り、サンダルをはいて、そっと玄関の扉を開けた。


そーっとそーっと隣をのぞく。


・・・まだいる。


私はゆっくりと外に出て、そっと彼に近づいた。


「ねぇ・・・」


私の声に、ガバッと顔を上げた。


「・・・」



うっ・・・



また、目を合わせてしまった。


整った顔して、子犬みたいなウルウルして目で見つめないでほしい。


目をそらしてしまいたい衝動を我慢して、私は言った。


「ここの家の人なら、帰って来ないと思いますよ。」


私の言葉が予想外だったのか、クリクリの目がさらに大きく見開かれた。



「今朝、見たんです。出張に行くような格好で出かけるとこ。

 だから、多分、今日は帰ってきませんよ。」


「そ、そんな・・・」


眉が八の字になり、更に目がウルウルしてくる。


「じゃあ・・・」


もう、無理だ。


その視線に耐えられなくなった私は、部屋に帰ろうとした。


「あ、あの・・・」


「何ですか?」


呼び止められて振り返ると、また目が合ってしまった。


「ここら辺で、どっか泊まれるとこありませんか?」


西の方のイントネーションだった。
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