フキゲン・ハートビート


そういうのが顔に出ていたのか、季沙さんはあたしの顔を見てニコッと笑った。


「こうちゃんもヒロくんも、放っておくとすぐにゴハン抜いちゃうからね、よくわたしがつくってるんだ。こうちゃんとはいっしょに住んでるから、お互い家にいるときはもちろん毎食用意してるんだけど」


やっぱり、同棲してるんだ……。

またサラッと、ふつうのことみたいに言うんだな。


きっと、洸介先輩と季沙さんはいっしょにいるのが自然、当然という感じなのだろう。

生まれる前から恋人になることが決まっていた、運命の相手なのかもしれない。


あたしはそういうのはあまり信じないタチだけど、ふたりを見ていると信じたくなるというか、信じざるをえないというか。

女子として、こういう恋愛は、やっぱりちょっといいなと思う。


「あまりにもヒロくんが食べなさすぎるから、たまにこうちゃんに引っぱって連れて帰ってきてもらって、ウチでいっしょにゴハン食べてるの。それが『アオイにメシもらったからしばらくいらない』とか言われてね、もービックリ!」


あたしもビックリだ。


「そんなに長期にわたって食いつなげるほどの食糧は与えてないです!」

「あはは! えー、ツッコミはそこなの?」


だって、もって3日くらいのゴハンだったよ。

長いこと置いといて、結果お腹くだしてないといいんだけど。


遠くのベンチにひとりで座り、ビールを飲んでいる寛人くんに目を向ける。


きょうも右手にはスマホを持っている。

またゲームでもしているんだろうか。

せっかくのバーベキューだというのに。

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