手の届く距離

それだけじゃない。

慣れてないのは甘えること。

女の子らしくあること。

頼ること。

どうしても対等でありたいと思ってしまう。

頼り切る形になりたくない。

お互いを尊重しあえる。

そんな関係がいい。

「だから、祥ちゃんは年上よりは年下の方がいいと思うのよねぇ」

年下では頼りにならない。

年上の、大人の男がいい。

甘やかしてくれる余裕がある男。

「それって年齢じゃないわよ。年上相手だと、祥ちゃん背伸びしすぎるもの」

まだ反論したかったが、顔は持ち上がらないし、ふわふわと気持ちよい揺れに身体を任せる。

呑みすぎたのは自覚している。

でも、やりすぎた。

自分で腕どころか、目蓋さえも動かせない。

意識が遠のく。

ダメだ、晴香さん一人にしちゃう。

「ちょっと飲ませすぎちゃって、帰れないのよねぇ」

「お疲れ」

晴香さんののんびりとした声に、誠さんが答える。

ああ、誠さんが来たならもういいかと思って沈んでいく意識を手放した。


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