君のココロの向こう側
少し作ったような笑顔でそう言った隆太郎に愛おしさが溢れて。



「……っ」



短い、触れるだけのキスをして、バスに飛び乗った。



「さっきの仕返し!」

「なっ……」



──プシュー……

目の前の扉が閉まり、口パクで「またね」と伝える。

読み取った隆太郎は、少し照れたような顔をして小さく頷いた。

やがて動き出したバスに、私達の距離は離れていく。



「……」



隆太郎の姿が小さくなり、胸がぎゅうっと締め付けられる。



隆太郎を大好きなのは変わらない。

だけど強いて言うならひとつだけ。

ひとつだけ、変わったこと。

別れた後、押し寄せる寂しさが大きくなったこと。



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