守花ー私と馬鹿でお人好しなあいつー
「お勉強?」
「あ、うん。華世はどうしたの?」
「忘れ物取りにきたの」
 華世は机からノートを出すと、照れるように笑った。
「バイバイ、夏弥ちゃん、葉月君」
 葉月はあたかも急いでいるようにバイバイと焦った感じで言う。
 本当に急いでいるんだろうけど。

 あの日から一ヶ月経って、葉月は華世の名前を呼ばなくなった。
 あれだけ華世を好きだった葉月が急に華世華世言わなくなるのを不思議に思われるのを気にしたからか、徐々に言う回数を減らして、今ではただのクラスメート。
 徐々に言わなくなったって、クラスのみんなは疑問に思うと思うけど、フられたと思ったのかみんなはその疑問を口にはしなかった。

 華世が何であんなことをしたのか理由は分からない。
 理由がわかった所で、何もできるはずもないけど。

「終わったー!」
 葉月はそう言うと、背伸びをした。
「帰ろ」
 私がカバンに荷物を入れて帰る準備を始めると、葉月はキョトンとした顔になった。
「……残念!とか言わないのか?」
「何が」
「三分以内じゃ無いとか……」
 ……華世のこと考えてたら忘れた。
「……そんなことより早く帰ろ。嫌な予感がする」
 カバンを肩に掛けながら言うと、葉月は急いでカバンに物を入れ始めた。
 ほとんど何にも入ってないんだけど。
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