守花ー私と馬鹿でお人好しなあいつー
「青野、山下先生が戻ってきて欲しいって言ってたぞ」

 笹川先生の突然の言葉に、私ワンテンポ置いてから首を振った。
 私は二週間前にテニス部を退部した。
 顧問の山下先生や部員のみんなは止めてくれたけど、気持ちを変えるつもりは無かった。
 女子テニス部の先輩が嫌だったわけじゃないし、練習がキツくて嫌になったわけじゃない。
 ただ……ちょっとした理由があったから。
 葉月にも言えない理由。

「私、飽きやすいから合ってなかったんです。日焼けするし」
 飽きやすいっていうのは本当だけど、日焼けを気にしてるって言うのは嘘。日焼け気にしないっていうのは女としてどうかと思う。でも、日焼け止めは塗ってる。
 二つのことは退部の理由としては嘘だけど。

「そうか」
 先生はそれ以上は何も言わず、出席簿から紙を取り出して私と葉月に渡した。
 私と先生が話している間、葉月は私の後ろで窓の外を眺めていた。
 部活についてはお互い干渉しない。
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