kiss of lilyー先生との甘い関係ー

京都ゼミ旅行

 水樹先生のところに遊びに行く習慣は夏休みに入ってからも続いた。火曜に変わって金曜に。水樹先生の授業後の代わりに、夏休み中もあるゼミの前にお邪魔している。

 お昼時だから、わたしがケータリングを二人分買って行って研究室で食べたりした。


「アボガドシュリンプとタンドリーチキン、どっちがいい?」

 テイクアウトしたサンドイッチとポテトの入った紙袋を机に置いた。

「どちらも好きだから、きみが選んでいい」

「そう? じゃあ先生がタンドリーチキンね、わたしきょう緑黄色野菜足りてないからアボカドで補うわ」

 先生が手を止めて、覗き込むようにわたしを見た。

「きみは…随分きちんと栄養を考えるんだな」

「脳に栄養が行き届いてないと考えられないの。たんぱく質や鉄分、ミネラルはもちろんだけど忘れられがちなビタミンE,A,Dやカリウムも、サプリメントじゃなくて食事からきちんと摂取しないと」

「…僕はきみを見習わなくてはいけないな」

 これは謙遜ではないだろう。ほんとうに見習ってほしかった。

 先生は一つのことに没頭すると、身体に危険が及ぶくらい睡眠・食事をするのも忘れるから。

 ”先生、顔色悪いですけど…食事とってます?”
 ”…忘れていた”

 今までに何度かこのやり取りをしている。

 人は一日二日食べなくったって死にはしないだろうけど、今年の夏は暑いから水分補給は忘れないで欲しい。わたしがゼミの旅行に行っている間に乾涸びてないといいんだけど。
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