夫婦ですが何か?
Side 茜
いつもより感情の制御がきかない。
自分でも理解していたそれに限界だと顔をしかめた彼女に更に欲情。
興奮しすぎだと詰る姿すら愛しき対象。
だって、
だって千麻ちゃんがいけないんだ。
責任転嫁のような言い訳を胸に、俺と繋がったまま一瞬の休息に呼吸を整えるのがやけに綺麗で扇情的だ。
うっかり見惚れたらすぐに欲に走ってしまいそうだと視線を時計に移してみると。
ざわりと騒ぐ。
欲も熱も。
悪戯で相変わらずその意図が分からない言葉で俺を確認すると、彼女の華奢で白い指先が頬を滑って欲の浮上。
千麻ちゃんが・・・・・悪い。
感情的にもなるさ、
馬鹿みたいにこの肯定から必死にもなる。
だって・・・・・、
もしかしたら・・・もしかして・・・・。
俺と千麻ちゃんの子供とか出来ちゃうかもしれないんだよ?
成行きから始まった俺たちだけどさ。
こうして2人で形成すものを生み出して育むというのは・・・、もう始まりがどうであれ・・・・夫婦になるって事じゃない。
そんな奇跡に近くもしかしたら望めないと思っていた未来に初めて千麻ちゃんが同調した。
・・・・ううん。
違う。
そんな堅苦しい事じゃない。
うん・・・そうだ、
興奮した理由なんてそんな大それた理由じゃなくて。
俺さ・・・、
千麻ちゃんに『好き』だって言われたことに興奮してるんだ。
『好き』だって言われたあの時からずっと歓喜が体で騒いで、
それを全部理解して見てほしくて行為に感情的になる。
簡単・・・・。
「千麻ちゃんが好きだよ・・・・・・」
得た結論をぽつり・・・。
情事による熱に絡めて彼女に落とせば。
緩やかに悦楽に揺らされ扇情的に切なく魅せていた彼女がその目蓋を重々しく開けていく。
その絶妙な目蓋の動きでさえ計算された美に感じて鳥肌が立つ。
頬に乱雑に張り付く髪でさえ・・・・綺麗で神秘的で・・・。
彼女の眼にとらわれた瞬間。
再度熱く零れる。
「・・・っ・・・・・・好きだよ・・・・・千麻」
泣いているような・・・・懇願しているような。
なのに消え入りそうな言葉の羅列に彼女が笑った。
小さく口の端をあげて。
『馬鹿ね』
そう言いたげに。