夫婦ですが何か?
自分の感情を優先するのであれば気になる内容。
『どうしたのですか?』とさらりと聞いてしまえば余計な探りもないのではないか?
でも悲しいかな明確に相手を理解している電話への切りこみ。
しかも相手が芹さんであるがために余計に疑いをかけている様に聞こえる気がして。
下手したら独占欲丸出しのヤキモチの様にも取られかねないと懸念が働き。
結果興味ないと示すように自分の携帯でネットニュースを眺めての意思表示。
本当はその文字をまともに捉えてもいないというのに。
そしてギシリと音はしないにせよ移動した体重で揺れるベッドと、私の腕に顎を乗せて自分の存在を示してくる彼。
「千麻ちゃーん・・・」
「何ですか?重いのですが・・・」
「さっきまでの俺の熱い愛情に比べたら微々たる物でしょハニー?」
「・・・・そうですね。重すぎて最近はどう軽量化させるか秘密裏に計画する程・・・・」
「こわっ・・・・、俺に何する気?」
「・・・・・・愛情削がれる・・・浮気とかでしょうか?」
「あっ、それ逆効果ね。そんなことしたら全力で追いかけて相手消しちゃうよ」
「・・・・・・・できなかったくせに」
ぼそりと呟いてしまった言葉にさすがに後悔。
これは時効とはいえど言ってはいけない事だっただろうか。
一瞬不動で考え込んで背後の彼の心情と反応に緊張が走る。
微妙な沈黙がさっきまでは確かに扇情的だった寝室に広がって、今にも自分の焦りを見せた鼓動が響きそうだと懸念した瞬間。
思わぬ感触にビクリと肩が揺れ、手から落ちた携帯がベッドで小さく跳ねて静まった。
背後からスッと体を這うように滑った彼の手が私の腹部で動きを止める。
そしてチュッと軽く首の後ろに口づけられそのまま言葉を響かせる唇の動きにゾクリとした。
「・・・・・だから・・・千麻ちゃんとこうしてる」
「・・・・・そうですね。成行きで、」
「ねぇ、・・・そろそろじゃない?少し前の【成行き】の結果・・・」
言いながら腹部を柔らかく撫でる仕草で主語はなくとも意味は分かる。
それに私だって忘れているわけではない。
むしろ近づくにつれて興奮を上回る緊張が強まって、カレンダーを見るたびに変な動悸が走るほどに。
「・・・・・・まだ、予定日ではありませんから」
「ねぇ~。・・・・・それ、早く分かる方法無いの~?落ち着かなくて最近仕事にも身がはいらないよぉ・・・・」
「それを理由にするのならもう二度とこんな賭けはしませんよ」
「それだけ・・・・・【夢】を見ちゃってるんですよ。宝くじの当選発表待つような・・・・」
ようやく振り返りながら牽制の言葉を向ければ、小さく不貞腐れたように眉尻下げた彼が更に腕に力を込めてギュッと抱きしめてくる。
あの時の賭けに・・・、
ああ、本当に大きく夢を描いて楽しみにしちゃってるのねダーリン。