夫婦ですが何か?
二度目の倦怠感。
今度は一人でなくその肌に彼の熱を感じてベッドに沈む。
2人して同じ方向を向き、背中を包むように彼が寄り添い私の髪を悪戯してみたり甘えるように唇で触れたりしてくる。
そんな彼を懐いてくる猫のように扱い流して体の回復に徹していれば、薄暗い部屋にぼんやりとルームライトでない明かりが灯り唸るようなバイブが響いた。
私の携帯は視線の先、視界に捉えられる位置で静かに黙している。
つまり彼の背後に放置してある彼の携帯からのそれだと理解した時にはバイブ音の沈黙。
首をひねって確認した時には携帯は彼の耳に当てられていた。
そして私から離れた彼の肌と明確に映る姿。
携帯を耳に当てながらその体を起こし乱れた髪を掻き上げる。
そんな姿を寝たままの角度から見上げてすぐに力なくベッドに沈んだ。
こんな時間に電話なんて珍しいと思いながら目蓋を下した直後。
「どうしたの?」
はて、この口調はえらく柔らかい。
彼が発する口調の中でも最大限に柔らかく相手を甘やかすようなそれだと感じて相手を探る。
気を許した相手にしかここまでの口調はまずしない彼だ。
その対象だとだいぶ限られ予測もしやすい。
でもこの時間帯だ。
考えられるのはあの泣き虫で愛らしいグリーンアイのウサギさん・・・・。
「ん、【芹ちゃん】、ちょっとよくわからない」
響いた名前で予測の外れ。
それと同時にぱちりと目蓋を開けると自分の携帯に手を伸ばし時間確認。
23時半・・・。
自分の頭に浮かんでいたのは雛華さんの双子の妹であり、彼の叔母に当たる夜兎さん。
内向的な彼女は事ある毎に彼に泣きついて、それは結婚するよりずっと前から。
むしろ彼らが小さい頃からの延長。
そして大人になった今でも頻繁に泣きつく夜兎さんからの着信であるならさして疑問も感じなかった。
でも一般常識得た芹さんがこの時間帯に彼に連絡を取るのは珍しい。
何事かとぐるりと視線を後ろの彼に戻し軽く体を起こすと、捉えてしまうのはそれこそ自然体で素の彼の力なき笑みと口調。
軽く笑い交えて電話先の相手にその信愛を見せる。
楽しげで嬉しげで・・・・・。
デレデレ・・・・。
相変わらず、彼女が大好きねダーリン。
呆れてしまいそうな彼の【元彼女】への反応に半目開きで数秒。
それすらも馬鹿らしいと気がつくと再度雑にベッドに倒れて目蓋を閉じる。
ああでも・・・・ちっとも眠くない。
「うん、うん、・・・・分かったよ。じゃあ、詳しくは明日」
最後まで優しげに、下手したら愛おしげに続いた会話。
それでもどうやら終えたらしい彼女からの通話。
さて迷うのは・・・・。
何があったのか聞くのが正解か、聞かずに興味の対象外だと示すのが正解か・・・・。