夫婦ですが何か?






簡潔に説明すれば、私達の元の関係は某会社の副社長とその秘書。


主に専属で彼につき手となり足となり働いて傍にいたのだ。


そんな彼に見初められ求婚され結婚。


ーーーーーなんてワケじゃなく。


この結婚に本来必要な【愛】なんてものは一切存在しないのだ。


そう、成り行き。


たまたま、必要な時に一番適当に当てがえるのが私であっただけ。


噛み砕いてこの関係を【結婚】とは別の言い方で説明すれば、、





「ねぇ、どうしても嫌?しない?」


「・・・・性的な関係は契約に含まれて無かったかと」


「普通、結婚って言ったら含まれるでしょ!?」


「・・・・・普通の結婚であれば、まぁ・・・」




普通ではないでしょう?


と、逆に怪訝な表情で投げかけるように言葉を返せば、さすがに落胆した姿がなんとか口元だけは弧を描く。


そして、ウンウンと仕方なしにそれを認めるように頷いた彼が体を起こし、すぐに私の姿を上から下まで視線を走らせると非難の眼差しで私を見つめた。



「・・・・何か?」


「何か?じゃなくてさぁ。もしする気ないなら千麻ちゃんも考慮してよ・・・」


「と、言いますと?」


「確実に男の性欲そそってるんだよその格好!風呂上がりの湿って緩んだ髪に、確実に男ものっぽいTシャツで際どい生足露出だし!・・・っ・・・・・まさかノーブラじゃないよね?」


「・・・・・何か問題が?」


「ねぇ・・・新手のツンデレ?!ツンデレなの??襲っていいの?引けばいいの?どっちが男として正解?!」



なんだかよく分からないけれど、目の前で酷く葛藤している彼が両手で顔を覆うと落胆する。


なかなか見れない姿だとベッドの上で膝を抱え頬杖をつきながら他人事のように傍観していれば、気がついた彼が目を細め私を見つめ、どこか恐る恐るそれを確認してきた。



「ねぇ、・・・一応突っ込んでいい?」


「はぁ、」


「そのシャツってさぁ・・・」


「・・・・・元彼のですね」


「・・・」


「と、いっても数回しか使って無く新品同様だったのを置いて行ったので、以後私の寝巻として・・・」


「そこまで聞いてない。ってか・・・・、新婚初夜にそんなの着る!?」


「・・・・別に特別な夜でもないかと」



本気で別に特別だとは思っていなかった。


だってこれは仕事の延長。


たまたま上司と同じ部屋に宿泊する事になっただけの事。


それもやや長期で。


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