夫婦ですが何か?
だから特別自分を着飾る必要も無く、いつもの様に意識せずベッドで眠りにつこうと思っただけの事。
なのに・・・、
「まさか・・・結婚初夜と言われるとは思ってませんでした」
「それ・・・、千麻ちゃんだからこその考え・・・」
「そうですか。では、特に何の支障もないでしょうがしっかりと自分に刻み込んでおきましょう」
言いながらベッド上で四つん這いになり上に上がると布団をはぐりその中に身を投じ始める。
すぐに困惑する彼の声が私の行動に待ったをかけて、、
「ちょっ・・・えっ?何してんの?」
「・・・何って・・・ベッドで本来の目的である睡眠をとりますけど?」
「えっ、俺の今までの意見丸無視?」
なんて面倒な。
堂々巡りになりそうなこの会話に眠気も孕んで若干の憤り。
今までで最大に溜め息をついてみせると、面倒だとうやや上目遣いの睨みを利かせてそれを口にした。
「申し訳ありません。結婚はいたしましたが副社長には一切の魅力を感じられません。よって男女の性的関係も成り立たないと記憶頂けますか?」
「・・・・」
「そして・・・この関係も1年です。1年後にはきっかり破棄し夫婦関係など無かったかのように接して頂きますからお忘れなきよう」
念を押すようにこの結婚を受けた時の条件を復唱した。
私の言葉に唖然とした姿が双眸見開き不動で見つめる。
会社で見るよりも幼い印象を受けるその姿に、そう言えば5つも年下だったのだと思いだす。
1年後私と別れてもまだまだやり直しのきく姿。
何もここで偽りの夫婦生活に変な関係を築くまでもない。
特に、こんなつまらない女を仮に夫だからと言って相手にすることはないのだ。
ここまで言えば私の言動に憤りも感じ、欲は感じず就寝するだろうとベッドに身を沈めようとした。
だけど瞬時に絡みついてきた指先が驚いている間もなくベッドに私を縫い付け、弾んだスプリングが収まりをつけるとその姿にまっすぐ見降ろされた。
あっ・・・。
金縛り。
不満げに寄せた眉根もすぐに離れる。
反抗的な視線もすぐに崩され少し動揺に揺れてしまう。
グリーンアイの威圧。
笑っているのにどこか不愉快。
好意的でない笑みが僅かにも動くなと私を標本の様にピンで留め刺す。
そしてそっと頬を悪戯に滑る指先。